更新日: 作成日:2018年1月18日
【ITP徹底解説】何がヤバくてこれからどうなる?ASPにも緊急アンケート
アフィリエイト広告の成果計測に致命的な影響が出ると、業界を激震させたApple社によるSafariへのITP投下。
「結局、ITPって何?」
「どれくらいアフィリエイトの収益に影響を与えるの?」
「ASPでは今どれくらい対策が進んでいるの?」
本日は、最初の混乱期を抜けた今だからこそ知りたいITPの疑問・不安を、アフィリエイトのトラッキング技術に詳しい専門家に話を伺いながら、徹底解明していきたいと思います。
本日のゲスト
アフィリエイト広告運用を専門とする広告代理店a-worksにて、複数ASPのトラッキング情報を一元化する広告管理者向けシステム「アフィリエイトマネージャー AdCent(アドセント)」の企画開発を担当。
高田さんは、AdCentというASP全11社(2018年1月現在)のトラッキング情報を統合する広告主向けツールの企画開発を担当されています。
アフィリエイト業界のトラッキング事情や技術に詳しく、今回のITP問題についても、ASP各社と連携しながら対応されているということで、詳しくお話をお伺いできればと思います。
AdCentは計測の精度と効率をあげることで、トラッキングの漏れ防止や承認スピードのアップといった形で、メディア運営をされているみなさまの利益に間接的に貢献させていただいています。
ITP問題も全力で対応中ですので、技術的なお話や現場の状況をお伝えできればと思います。
※※読者のみなさまにご留意いただきたいこと※※
ITPはブラックボックスでまだわかっていない点も多いため、一部推測で進めざるを得ない点があることはあらかじめご了承ください。
ITPって結局なんなの?
ITPは、Intelligent Tracking Preventionの略。
Appleの独自ブラウザSafariに新しく備わった、機械学習を用いてCookieを判別する機能で、ユーザーが望まないトラッキングを防ごうとする仕組みです。
データ参照元:StatCounter
日本ではiPhoneがポピュラーなので、モバイル・タブレットのSafariシェアが64%もあります。そのほぼ半分のユーザーがITPが装備された最新バージョンをすでに利用しはじめているんですね。
Cookie(クッキー)とは、アクセスしたサイトの閲覧履歴やログイン情報などを記録する、ブラウザに備わったメモ帳のような存在です。
ユーザーがサイトを再訪問した際に、Cookieの情報からサイトは同一ユーザーを判別することができます。
ショッピングサイトに時間が経ってから再訪問したにもかかわらず、ログイン済みになっていたり、カートに以前入れた商品が残っていたりするのはCookieの働きです。
アフィリエイト広告もこのCookieの仕組みを利用して、アフィリエイトメディア訪問者と購入者を突き合わせることで成果を計測しています。
このように、Cookieは本来便利な仕組みなのですが、一方でユーザーが気づかないうちに書き込まれたCookieによってプライバシーが侵害されたり、ユーザーの快適なネット利用を侵害してしまうケースが問題視されてきました。
広告業界では、しつこいリターゲティング広告なんかが有名ですよね。
リターゲティング広告のように、訪れたサイト(広告主サイト)とCookieを書き込むサイト(Googleアドワーズ)が異なる場合のCookieは3rdパーティーCookieと呼ばれていて、ブロックする動きは以前からありました。
一方で、アフィリエイトの計測Cookieはリダイレクトしているとはいえ、実際に訪問するASPサイトで直接書き込まれるCookie(こちらは1stパーティーCookieと呼ばれます)なので、これまではそうしたブロックの対象ではなかったんです。
しかし、実態としてはユーザーに訪問の自覚がないサイトが書き込んでいる形になっているため、ITPでは3rdパーティーCookieの定義を広げて、サイトをまたいだトラッキングをしていると判定したCookieをブロックする仕様になっています。
こちらはAppleの開発サイトに掲載されたITPについての記事の冒頭部分ですが、要約すると“ITPはサイトを横断するトラッキングを防止する”ということが書かれています。
出典元:WebKit
もうこれまでどおりの成果測定は不可能なんですね・・・。
ただ、ITPの判定は端末ごとに行われると言われているので、一律でアフィリエイトのCookieがNGになるのではなく、ユーザーによってブロックされたりされなかったりします。
実際、ITPが装備された最新版Safariであっても、ASP発のCookieでトラッキングできているケースも多く、現状の成果計測への影響は数%~10%程度と思われます。
ITPが装備されている=計測不能、というわけではないんですね。
とはいえ、ITPの機械学習が進めば、成果計測への影響は拡大不可避なので、早めの対策が必要になります。
ITP対策はどんなことをしているの?
ITP対策に関するお知らせはASP各社から出ていますが、実際にはどんな対策をしているんですか?
広告主の協力も仰ぎながら、ASP発の3rdパーティーCookieに頼らない計測方法に乗り換える作業をしています。方法は全部で3種類です。
【対策方法1】広告主ドメインでCookieを付与する
広告主サイトで直接Cookieをつけることで、ITPにひっかかる「サイトをまたいだ計測」を回避する方法。
Google Analyticsが採用している計測方法と同じです。
ASPを経由する際にはCookieではなく、パラメーター(固有の識別番号のようなもの)をURLに付与。
広告主サイトのLPに埋め込まれた専用のタグが、このパラメーターに反応してCookieを書き込むことで、ASPサイトを介さず広告主サイト内でCookie発行ができます。
この方法だと、LPにパラメーターに反応するタグの設置をする必要があります。
購入ページがLPではなく商品リンクの場合は、すべてのページへのタグ設置が必要だったりするので、対応する広告主さんは大変です。また、Cookieはドメインに紐づくため、LPとサンクスページのドメインが異なるケースもなかなか大きな悩みだったりします。
なぜ一斉対応じゃなくて、案件ごとに順次対応なのかと思ったら・・・こういうことだったんですね!
そうなんです。でもこの手法のメリットは、何といっても今までのCookieと同程度の精度が期待できる点です。
【対策方法2】ブラウザ推定技術「ブラウザフィンガープリント」を利用する
ユーザーが使っているブラウザの種類、バージョン、ITPアドレスなどを組み合わせてプロファイルし、ユーザーを特定する「ブラウザフィンガープリント」の技術を用いたトラッキング方法です。
こんなことができるんですね!
ブラウザフィンガープリントのメリットは、何といっても導入が簡単という点です。
【対策方法3】セッションIDを使ったトラッキング
広告へ飛ぶリンクに固有のパラメーターを付与し、そのパラメーターをページ遷移ごとに引き継いでいくことでトラッキングする方法です。
このやり方は精度が高い反面、広告主サイトにパラメーター設置のための専用プログラミングが必要など、広告主さん側にかかる技術的な負担が大きいので、なかなか普及しにくいのが難点です。
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ASP各社、通常は上記3つの方法のうち2つ以上には対応しているので、最終的にどの方法にするかは広告主さんが選択しています。そのため、複数の手法に対応しているASPは、案件ごとにトラッキングの手法が異なります。
今までトラッキング=Cookieと思い込んでいましたが、他にもこんな方法があったんですね!驚きです。
ITP対応、ぶっちゃけどうですか?ASP 4社に緊急アンケート!
ITP対応の技術的な話ははわかったけれど、メディアとして一番気になるのはASP各社の対応状況です。
公式アナウンスも出ていますが、よくわからない部分が多いのも事実。
そこで、
ASP 4社にITP対応のリアルな現状を聞いてみました
・afb
・バリューコマース
・Websync
2. 対策は2017年12月時点でどれくらいの進捗ですか?
3. ITP対応した案件としていない案件で、成果計測にどれくらい差がでていますか?
4. 広告主さんにはどんな働きかけをしていますか?
5. メディア運営者側への説明、表示の工夫はどんなことをされていますか?
A8.net
1. 対応完了予定はいつですか?
2018年3月末完了を目指して動いております。
2. 対策は2017年末でどれくらい進んでいるのですか?
12月22日の時点で約400プログラム程です。
(この記事が公開された2018年1月中旬の段階では600プログラムまで対応が進んでいます)
A8さんの規模を考えると、全体の6%くらいでしょうか
3. ITP対応した案件としていない案件で、成果計測に差は出ていますか?
商材、サービスにより異なるので明確な差は出せない状況です。
徐々にトラッカー判定された端末が増加していくと推測しておりますので、影響は急激ではなく少しずつ出てくると想定しています。
やっぱり、ITPの影響はこれからが本番なんですね・・・
4. 広告主さんにはどんな働きかけをしていますか?
A8.net(アフィリエイト)の根幹である「トラッキングシステム」、メディアさまの考え方をあらためてご理解いただいた上でご協力いただいております。
5. メディア運営者側への説明、表示の工夫はどんなことをされていますか?
ITP対応プログラムがすぐにわかるよう、ITPバナーを表示しています。
A8.netで展開しているすべてのプログラムに安心して参加していただけるよう、「精度の高いトラッキングシステム」の再構築を進めています。
同時に広告主さまに成果地点、成果報酬設定も見直していただき、より良いアフィリエイトプログラムにしていきますので、ご理解いただければと思います。
A8.netは上記のとおり、各アフィリエイトプログラムを見直し、より良くしていく機会と捉えております。
今まで以上に安心して参加できて、魅力的なプログラムがあるアフィリエイトサービスを目指して参りますので、引き続きよろしくお願いいたします。
ITPに対応するだけでなく、サービス全体をよくする取り組みもされているということがわかって、希望の光が見えた気がします!
afb-アフィb
1. 対応完了予定はいつですか?
2018年4月を予定しております。
広告主さま、代理店さまなどがスムーズに対応していただければ、3月中も可能かと思っております。
2. 対策は2017年末でどれくらい進んでいるのですか?
以前から進めていたクッキーに依存しない計測方法がありますので、現在すでに約840プロモーションへの対策ができております。
加えて、さらに計測を向上させるためITPの影響を受けないファーストパーティCookieでの計測もあわせて提供しているところです。
ITP以前から、トラッキングの精度向上に取り組んでいらっしゃったんですね!
840というと、afbさんの規模を考えると、全体の10%くらいでしょうか
3. ITP対応した案件としていない案件で、成果計測に差は出ていますか?
※afbさんは以前からクッキーに依存しないトラッキング対応を進めていたため、この質問はスキップしました。
4. 広告主さんにはどんな働きかけをしていますか?
業界全体がITPに対応する方向になっているということ、そしてITPに対応することでメディアパートナーさまが安心して取り組めるプロモーションになるということを伝えています。
5. メディア運営者側への説明、表示の工夫はどんなことをされていますか?
afbではメディアパートナーさまの管理画面で、ITP対応プロモーションを見ることができます。
プロモーションにITP対応アイコンが表示されておりますのでご活用くださいませ。
afbをどうぞよろしくお願いします。
バリューコマース
1. 対応完了予定はいつですか?
2018年3月中の完了を目標としております。
2. 広告主さんにはどんな働きかけをしていますか?
1社1社、個別に説明し、ITP対応の導入フォローをさせて頂いております。
多くの広告主さんを抱えるバリューコマースさんが、1社づつ丁寧にフォローされているという手間と努力にびっくり
3. メディア運営者側への説明、表示の工夫はどんなことをされていますか?
まずは、対応件数を増やすことに専念しております。
Websync
1. 対応完了予定はいつですか?
2018年3月を予定しています。
2. 広告主さんにはどんな働きかけをしていますか?
メディアさまの視点から考えると、ITPに対応しているプログラムは優先順位が高くなります。
取り組むメディアさまが増えることは、結果的に広告主さまにとっても獲得件数が伸びることになります、とご協力をいただいております。
3. メディア運営者側への説明、表示の工夫はどんなことをされていますか?
プログラム説明文にITP対応アイコンを表示し、メディアさま側でITPに対応しているかどうか確認できるようにいたしました。
ITP対応にしっかり取り組んでいらっしゃることで、今後あるだろうさまざまな仕様変更も、真摯に対応してもらえそう!と安心できます。
まとめ
・ITPとは、サイトをまたいだトラッキングを防止する仕組み。(Safari限定)
・これまでのASP発のCookieを利用したアフィリエイト成果計測は、ITPの削除対象になる。
・ブラウザごとの機械学習による判定なので、現状では人によってCookieが削除されたり削除されなかったりする。
・削除対象になるCookieに頼らない計測方法は3通りあり、ASPごとに採用状況が異なる。
ITPは確かに怖いなと思いましたが、具体的な対応が進んでいることがわかって少し冷静になれました。
ASP各社も3月ごろには対応完了予定ということで、ITPの機械学習が本格的な猛威を振るう前に、切り替われば嬉しいです。
ITP対策は可能なので、メディア運営者のみなさまが安心して作業に集中していただけるよう、技術面でできる限り早い対応をしていければと思います。
メディア側は案件のITP対応をただ待っているしかないんでしょうか。
そこはぜひ、メディアさんの立場からITP対応の必要性を広告主さんに向けてにアピールしていただけると心強いです。
広告主さん側からすれば、ITP対応は導入の手間を掛けて広告費が増えるという、あまり嬉しくない事態なのは確かですもんね。
しかし、アフィリエイトは成果報酬型なので、計測ができなくなるというのは死活問題。
正直申し上げて、ここを渋る広告主さんはアフィリエイト広告をやめたほうがいいくらいの話です。
ITP対応で広告主さんの姿勢がある意味はっきりするんじゃないかなと思っています。
なるほど。ITP対応は広告主さん側の対応次第なところが大きいですもんね。早速ASPに要望を送ってみます。
メディア側からは知ることができない技術的な側面からの詳しい解説、ありがとうございました!
やっぱりITPはヤバイ・・・!でも、現場では着実に対応は進んでいます。
変化の早いWebの世界だからこそ、情報収集をしながら常にキャッチアップしていきたいですね。
Intelligent Tracking Prevention | WebKit
ITPの仕様と挙動について、あまり知られていないことを簡単に整理する – マーケティングメトリックス研究所/MARKETING METRICS Lab.
案件の裏側や、すばやい対応が求められる時事問題の解説・・・
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